あの日と同じだと花名は思った。
この車に乗ったのは二度目。はじめはあの雨の日。
道端で倒れた花名を純正はこの車に乗せ自宅に連れ帰って介抱した。
あの出来事がなかったら、今こうして隣にいることもなかったかもしれない。
「純正さん」
「ん?」
「いつもありがとうございます」
「いやいや、こちらこそありがとう。仕事が落ち着くまではあまり無理して家に来なくてもいいからな」
「それはいけません」
花名は首を横に振った。
「私が純正さんの身の回りのお世話をさせていただいているのは、母の治療費の代わりなんですから」
むしろ、今の自分の働きでは足りないくらいだと思っている。
「そういうと思った。……そのことでひとつ相談があるんだ」
「なんでしょう?」
「知っての通り、君のお母様にはあの薬がとてもよく効いて、とてもいい治療効果が出ているよね。だから俺はこの治療は必要な人全員に受けてもらいたいと考えてる」
「私もそう思います」
純正の言葉に花名は強くうなずいた。
けれど、金額から言って誰もが受けられる治療ではないはずだ。花名は表情を曇らせた。
「でも、受けたくても受けられない人の方が多いと思います……」
「今はね。でもこの薬が日本で承認されれば、こんな高額な治療費はかからなくなる」
「本当に? 承認されるのにはどうすればいいんですか?」
「この治療を論文にまとめたいと思っているんだ。君のお母さんの経過もデータとして使いたい。もちろん、個人は特定されない。実は、雅恵さんには許可をもらってるんだ。花名はどう?いいかな?」
そう聞かれて花名は少し戸惑った。正直難しいことは何もわからない。だが、純正の言ことに間違いはないだろう。
「……はい。もちろんです」
「そうか、ありがとう」
満足そうな純正を見て、花名もうれしくなった。たくさんの患者さんの命が救われる未来に、ほんの少しだけ関われたような気がして。


