愛しい人

 エレベーターで地下の駐車場に降り、停めてある車に乗り込むと純正はエンジンをかけた。

「家まで案内してくれる?」

「ええと、普段車で移動しないので、道がよくわからなくて……」

 花名は申し訳なさそうに俯いた。

都内に住んで長いというのに移動するのは電車かバスがほとんどで、どの道を通ればいいのかなんて全く分からない。

「お役に立てなくてごめんなさい」

「大丈夫だよ、住所は?」

 純正はナビに花名のアパートの住所を入力した。

「なるほど、三十分で着くのか。着いたら起こすから、寝ていいよ」

 純正はそう言って、カーステレオの音量を下げる。

「純正さんに運転させておいて、私だけ眠れません」
 
 確かに今にも眠ってしないそうなほど疲れていたけれど、助手席で眠ってしまえるほど図太くはない。

「そういうと思ったよ。じゃあ、急いで帰ろうな」

 純正は優しく目を細めると車を発進させる。
急いでとは言ったけれど、運転はとても丁寧だった。