愛しい人

「花名、無事でよかった」

「純正さん。あの……怒って、ないんですか?」

 てっきり叱られるとばかり思っていた。だから今、こうして抱きしめられている状況が余計に理解できない。

「怒るわけないだろう。心配したよ。連絡もつかないし、病院にも電話したら見舞いにも来てないって言われて……」

「ごめんなさい。そんなに心配をかけてしまったなんて思いもしませんでした。実は今日……」

急な会食の予定が入ってしまったこと、スマホも充電が切れてしまい連絡が出来なかったことを丁寧に説明した。

すると純正はホッとした様に長く息を吐いた。

「そうだったのか。事故にでも巻き込まれたのかと考えたら、生きた心地がしなかったよ」

 その声が今にも泣き出しそうに聴こえて、花名は純正の背中を抱きしめるように手をまわした。

「本当にごめんなさい純正さん。ご飯も作れなかったし、迷惑かけてばかりですね。少し遅いですが、簡単なものでよければすぐに作りますから」

「飯はいいって、それより本当に無事だったかどうか確認させてくれないか」

 純正は抱きしめた手を緩めると花名を見つめ、そのまま唇を合わせる。

いつもより長く密着していた唇が離れると、純正はこう切り出した。

「今日はもう遅いし泊まったらいい。いや、今日だけじゃなく……ここに住まないか、花名」

 突然そんな提案をされて驚いた花名は純正を見上げた。