愛しい人

「あれ、小石川さん!」

 樹は驚いた顔で駆け寄ってくる。

「おはようございます。樹さん」

「おはよう。どうしたの?」

「長らくお休みをいただいて、ありがとうございました。明日からでも復帰させてください」

 花名が頭を下げると、樹は浮かない顔を見せた。

「……そのことなんだけど、ここじゃ何だし中へ入ろうか」

「はい」

 樹に付いて店の中へ入る。たった数日しか休んでいないのに、酷く懐かしい感じがする。

「シャッター開けてきますね」

 花名が店の入口の方へと歩いていこうとすると、樹は「いいから座って」と少し強い口調で言った。

「分かりました」

 花名が腰を下ろしたのを見計らって、樹は口を開く。