リビングに戻ると、純正は驚いたような顔をした。
「ずいぶん、早かったね」
「はい」
「ゆっくりでよかったのに」
「……すみません」
「いや、いいんだ。責めているわけじゃないんだよ。ただ、花名は甘える練習をしないといけないね」
「甘える?」
「そう。ほら、座って。朝ごはんを食べよう」
テーブルの上には純正が作った朝食が並べられていた。特別凝ったメニューではなかったけれど、一口耐えて花名は目を丸くした。
オムレツはふわりと柔らかく濃厚で、口の中に入れると滑らかに溶けていく。
トーストもサクサクもっちりとした触感で、耳までおいしく食べられてしまう。
サラダにかけられたドレッシングは花名が買っておいたものとはひと味もふた味も違う美味しさがある。


