翌朝。純正の隣で目を醒ました花名はまだ眠っている彼の寝顔を黙って見つめていた。
伏せられたまつげはとても長く、高い鼻筋は頬に影を落としている。カーテンの隙間から漏れる日の光に透かされた黒髪は艶やかに輝きをまとう。
憧れに過ぎなかった純正のことをこれほどまでに間近で見られる日がこようとは、夢にも思わなかった。
「……花名? もう起きたの?」
純正はうっすらと目を開けた。驚いた花名はあわてて視線を逸らした。
「おはようございます」
「おはよう。ちゃんと眠れた?」
「はい」
「よかった。でも、まだ起きるのには早いよ。アラームが鳴るまでここにいて」
純正は横になったままの姿勢で両手を広げる。
「おいで、花名」
「……でも」
自分から純正の胸に飛び込むのはまだ恥ずかしい。
昨日の夜、純正はゆっくりと距離を縮めていこうといってくれた。普通の恋人同士のように、デートを重ねることから始めようと。
だからまだ二人は男女の仲にはなっていない。花名はあのまま抱かれてしまわなくてよかったと思っていた。それは、純正により大切にされていると思えたから。


