------ 博麗神社 境内 ------
 霊夢が去り、勝負に負け、倒れたままの魔理沙がいた。去る前の霊夢は、とても悲しげに見えたが、真顔でいた。今回の異変で何かを感じ取っているということだろう。魔理沙は何一つ感じていない。先程まで、霊夢に怒っていたからだろうか?勝負に負けたことで、霊夢が行かなくなるからか?分からない。ただ、今ずっとこのままではいられないってことだけは確信していた。魔理沙は、傷だらけの身体をゆっくりと起こし、箒に跨がって、霊夢の後を追った。

------ 妖精の森 上空 ------
「全く…酷い雨ね……」
 霊夢は、妖精の森上空を飛んでいた。普段なら、小さい妖精が悪戯しに飛んでくるが、それがない。一匹も。雨で避難してるのか、この異変によって沈黙しているのか、色々予想は浮かぶが…。実際、この雨に打たれている霊夢も、少し鬱っぽいものを感じる。誰かの過去の記憶を雨に打たれた者へ直接伝えているような……そんな感覚だ。霊夢は、自身の回りに結界を張って、雨から防いでいるが、その霊的な能力は感知できる。
 ふと、森の方を見ると、二匹の妖精が見えた。一方は、薄緑のワンピースで大きな羽を背中に携えている女の子。もう一方は、青と白のワンピースで背中に氷の結晶を左右に携えている女の子。
(あいつらは、普通なのか……)
 霊夢は、その二匹を無視して進もうとした瞬間、目の前に先程の青と白のワンピースの女の子が現れた。
「おい!博麗の巫女!ここを通りたければ私を倒してみろ!ま、天才のアタイに勝てるわけ無いだろうがな!」
(またこいつか……)
 毎回異変の度に、妖精の森を通るのは仕方ないことなのだが、通る度に今のような足止めを必ずくらってしまう。霊夢にはとても腹立たしいものだ。因みに、今、目の前にいるバカはチルノ。氷の妖精で、氷を操る程度の能力。ただ、今みたいに、あえて勝てない相手に勝負を挑むバカという性格さえなければ強いと思うのだが……。
 霊夢は、ため息交じりの声で追い払おうとした。
「今は、あんたに構ってる暇ないのよ。とっととどきなさい」
「やだね!ここはアタイの縄張りなんだ!邪魔するやつはみんな倒してやる!」
「はぁ…」
 ため息しか出ない。そもそも、やる気がない。こんな奴に遅れ取る程、落ちぶれてはいないが、如何せんやる気が出ない。この雨によってやる気が削がれているのか分からないが、正直やりたくない。だが、チルノのあの様子だとやらないと通してもらえないだろうし、サクッと倒して先に進もうと考えた。
「仕方ない…。後悔しても知らないわよ!」