「邪仙!あんたを絶対に許さない!」
 霊夢は檄に奮えていた。今回の異変での最重要人物で、私を闇に堕とした張本人。「生半可な退治で済まそうと最初は思っていたが、気が変わった!あんたが泣き叫び、命乞いをするまで拷問にかけてやる!」
「あらあら、怖いわぁ。こんなか弱い女の子にそんな酷いことをするのかしら?」
 霊夢の横に突如として現れた邪仙青蛾。それを見て霊夢は間を取り、符を取り出した。青蛾は戦う素振りを見せず、ただ手で口を覆いクスクスと笑う。
「私は戦う気は無いわ」
「……は?何ナマ言ってんのよ」
「ふふっ……。私は楽しみたいだけ。だから、戦う気も無いし、抗う気も無い。ただ、私は見たいだけ」
「何を……」
「私は新しい神を作ったわ。元々いた神を超越した、第3世代の神を」
「何よそれ」
「貴方は知らないと思うけど……今の幻想郷には2種類の神がいるわ。先ず最も沢山いるのは、何かを司り、それを依り代として古くから生きている者。これらが第1世代。第2世代は守谷の巫女ね。幻想郷外から神の素質がある人間を幻想郷に連れてきた瞬間に神へと種族が変わる神。そして、今この寺社にいるのが第3世代の神よ」
「…………まさか」
「神の家系の末裔を幻想郷外で神の魂を憑依させ、無理矢理神にするというものよ」
「そんな…非人道的すぎる」
「確かに、あの子には悪いことをしたと今でも思うわ。でも、最終的にあの子は承諾したわ。『役に立つのなら何でもします』って」
「………っ………」
「ふふふ……。言ったでしょ?私はあくまで計画を進行させる歯車の1つというただの使い捨てよ。私を倒した所で何も変わらないわ」
「それでも……、あんたは退治しなくてはいけない。例え、倒す意味は無くとも、幻想郷を危険に脅かした罪を贖い抹殺されろ!」
 霊夢は鬼針を数本取り出し、青蛾に向けて投げた。しかし、鬼針の投げた先に青蛾の姿はなく、辺りを見回しても青蛾の姿は無かった。
「くっ……」
「私を拷問にかけられなくて残念ね。でも、あなたをそのまま興醒めさせるのは私も楽しくないわ。水神社の最奥であなたを待っているわ」
 青蛾の声がしなくなり、霊夢は一人雲海に残された。
(まさか、邪仙と言えど、これ程までに異常な計画を練っているとは思わなかった。神霊廊の時の邪悪さはまだ開花されていなかったのだろうか)
 霊夢は、色々悩むとこもあったが、とりあえず水神社に向かい、全ての真相を聞き出すことを決し、また飛ばした。