--- 守谷神社 ---
 霊夢を探していた魔理沙は、霊夢より先に守谷神社に着いていた。守谷神社には、奇蹟の巫女東風谷早苗と軍神八坂加奈子、蛇神洩矢諏訪子がいる。魔理沙にしてはまだ友好的な面子だ。鳥居を越えると、異様な光景が広がっていた。蛙、蛙、蛙。蛙の大群が、神社の境内に大量発生しており、神社の上には、巨大なガマトノが居座っている。
「なんじゃこりゃ……。蛙は諏訪子が管理してるはずだが」
 魔理沙が唖然としていると、後ろから肩を掴まれた。魔理沙は払い除けようと後ろを向くと、早苗が真面目な顔をして引くよう促された。何も情報ないまま突っ込んでも意味が無いので、魔理沙は早苗の指示に従い、近くの分社に避難した。中には、八坂加奈子が目を瞑って瞑想をしていた。
「来たか。魔理沙」
「加奈子……。あれはどういう状況だ?蛙は諏訪子が管理してるはずだが」
「それについては私から話します」
 早苗は魔理沙にお茶を出し、真剣な眼差しで経緯を話した。
「蛙が大量発生したのはつい三日程前。最初は、諏訪子様が連れてきたものだとばかり思ってましたが、諏訪子様の姿は一切見当たりませんでした。私は辺りを探しましたが、やはり見付かりませんでした。次の日の夜、外に大量発生している蛙の中に諏訪子様のような姿が見えたので声をかけたのですが、返事がなく何か悪寒を感じて離れました。すると、諏訪子様の姿をしたものは巨大なガマトノに変化し、守谷神社を占拠し、今に至ります。私の見解では、諏訪子様が何者かに襲われ、諏訪子様の偽物があの状況を作り出したんじゃないかと思っています」
「………」
 諏訪子は神だから、諏訪子が負けることはあまりないはずだが、この状況は今までの状況と何となく似ている。つまり、守谷神社の上にいるガマトノは諏訪子の影が変化したものだ。なら、あれを倒せば蛙も姿を消すんじゃないかと魔理沙は考えた。
「なら、あのガマトノをぶっ飛ばして諏訪子を救おうぜ」
「無理です」
「は?」
「先日、私と加奈子様とで、あのガマトノを退治しました。しかし、すぐに復活し、飲み込まれそうになったので一時撤退しました」
「無敵ってことか?」
「分からないです。ですが、このまま見過ごす訳にもいきません」
「そっか…。んじゃ、行ってくるか」
 魔理沙が立ち上がり、分社を出ようとした時、早苗も慌てて立ち上がった。
「あ……、待って下さい!私も……!」
「早苗」
 加奈子が、早苗を止めた。
「加奈子様……」
「あまり、お前にも無茶はさせたくないんだが……」
「大丈夫です、加奈子様。私も異変解決した身。このまま、諏訪子様を取り戻せないのは今までの信仰を水に流すのと同じです。必ず、諏訪子様を取り戻してきます」
「……そうか。魔理沙」
「ん?なんだ?」
「不肖の娘、早苗を頼む。そして、あのバカを連れ帰ってきてくれ」
「了解。行くぞ、早苗!」
「はい!加奈子様!行ってきます!」
「あぁ、気をつけてな」
 魔理沙と早苗が分社を出て、加奈子はまた瞑想に入ろうとした。その時、後ろから何かを察知し、振り向いた。そこには、見覚えのある博麗の巫女、霊夢が壁に寄り添って腕を組んでいた。
「博麗の巫女…。来ていたのか」
「あの蛙も、影に魅入られたのね」
「影……?何を言っているんだ?」
「あんたが何も起きていなくて、何も知らないならそれでいいわ。早苗も魔理沙もまだわかってないし」
「待て……霊夢。お前、何を知ってる?」
「…………。あなたに話すことはないわ。それじゃ」
「おい!待てって!」
 霊夢は、静かに分社から出て行った。
「何なんだ……あいつ。いつもより、生気が無く別人のようだったが」
 そうして加奈子は、瞑想に入った。