--- 妖怪の山 中腹 ---
 雨の影響もあってか、妖怪の山では土砂崩れがよく起きている。山の森の約4割が地肌を露わにしている。自然災害とは言え、これはかなり酷い。復元にもかなり時間を要しそうだ。霊夢は森の上空を飛行しているが、木のギリギリぶつかるかぶつからないかぐらいの高さで飛んでいた。ふと、とある施設を見つけると、ゆっくりと降りていった。その施設は、見た目は小屋だ。隣には、大きな金床炉や見たことのない鉄の塊が並ばれていた。そう、ここは工場だ。この工場の管理・製作をしている妖怪がここにいる。
「にとり?入るわよ」
 小屋の中はいっぺん綺麗に見えるが、設計図やら発明品やらで散らかっている。
「ん?誰?」
 部屋の奥の暖簾から一人の少女が現れた。容姿は、青髪のツインテで、緑の帽子を被り、青のワンピースを着ている。彼女が河城にとり。河童だ。頭の皿はないが、本人はあると言っている。人間が大好きで、霊夢もよく会ったりしている。
「あ、霊夢じゃん!よくきたね!ちょっと待ってて、今片付けるから」
 にとりは、机と椅子を軽く整理し、霊夢を座らせ、お茶を用意した。
「……で、何かお悩みで?」
「……まだ、何も言ってないんだけど」
「あら?そうだっけ?でも、これで何考えてるか分かるんだけどね」
 にとりは、右手に握っている1つ目のボールを霊夢に見せた。
「霊夢が頼んださとりんボールだよ。これで、相手の本心や考えていることを読み取る事が出来るんだ。」
「へぇ、出来たんだ。じゃあ、頂いていくわ…」
「待って」
「……?」
「その前に、悩みを教えて。私にできるなら、相談に乗るし」
「…………」
 悩みはある。湖での闘いで既に確証を得ているし、それに恐怖している。更に、そこで魔理沙に全て取られたことで、感情が惑わされていることも。本来、自分にはないこと。それは、霊夢自身知られたくないのだ。
 にとりは、さとりんボールを軽く握って、それを読み取っていた。このまま俯いたままの霊夢では、自ら話すことはないと踏んでいた。
(この悩みは…結構重いね…。私も、あまり言える人じゃないし……。これは、私に出来るとするなら…)
 にとりはスッと立ち上がり、霊夢を前から包み込むように抱いた。
「………っ………」
「私に出来ることはないけど…心を落ち着かせることぐらいはさせて」
 その時の霊夢は、とても弱々しく、小刻みに震えているのをにとりは、しっかり抱き抑えようとした。