「おはようございます。」
「おはよう。」
橘 凜花、26歳。
どこにでもいるOLだ。
スーツに身を包み、腰より少し上の髪を後ろで1つに括っている。
自分のデスクに座り、カバンからファイルや手帳を取り出し
パソコンの電源をつける。
いつも通り、日常動作の1つだ。
「橘さん、悪いんだけど11時から会議があるからお茶をお願いしてもいいか?」
「はい、もちろん大丈夫です。」
部長に頼まれては断れない。
「あと、この資料を今日中にまとめておいてくれないか?」
かなりの量の資料を渡される。
今日中か...。
まだ昨日頼まれた資料が残ってるんだけど。
残業すれば間に合うか。
「今日中ですね。 分かりました。」
「すまん、頼むな。」
無表情のままの部長。
佐々木 琉翔(れんと)部長。
滅多に笑わないため、部下からも上司からも恐れられている。
でも仕事はよく出来て、容姿もいいので女性社員からは人気がある。
告白しようとは思わないみたいだけど。
まぁ、そんなことは私には関係ない。
11時まで、まだ2時間もある。
昨日の資料も今日までだから、それからやってしまおう。
家でもやったから、2時間で終わるだろう。
パソコンに向かい、キーボードをひたすら打つ。