支配し、統一するのが…平和への唯一の手段?


そんなの。そんなのって、ない。


本当にそう思ってるの?ランスさん。



「お疲れでしょう、陛下。寝室にご案内しますので、夕餉まで、そこでお休み下さい」


「…ありがとう、ございます」



けど、何も言えなかった。


何も知らない新前魔王の私が、平和な日本で生きてきて『死』も知らない私が、


この人に何を言えるだろう。



ここで彼の意見を批難できる経験がないうちは、


私が何を言ってもそれは、綺麗事や偽善に過ぎない。



自分に酔ったって、人間と魔族の関係は変わらない。



ランスさんが地下室の扉を開けたことで、ランプの他に少しだけ光が入った。


私は拳を握ると、地下室から出た。