「ランスロットさま…本当に魔王様は、優しい人なの?」



恐る恐る、というように男の子がランスさんに尋ねる。


ランスさんは「ああ」と言って頷くと、彼の頭を撫でた。


…すごい。ランスさん、信頼されてるんだ。


彼が私を庇ったその瞬間に、私に対する恐怖の視線は一気に減った。



すごい人なんだな…。



「あ、あの…本当に、殺さない?僕のこと…」


「…そんなこと、するわけない!誰も、君を傷つけたりしないよ」



おずおずと私を見上げた男の子に、ツキンと胸の奥が痛む。


こんな小さい子をも、ここまで怯えさせて。


なんて奴だったんだろう、先代様とやらは。



前の勇者に討伐されたのは、その非道さ故だったのかもしれない。



「ああ、坊や…良かった。


新王陛下、ご寛大な御心に感謝致します」



駆け寄ってきた女の人…男の子の母親らしき人が目に涙を溜めて、頭を下げた。


寛大な心も何も、なんで子供が転んだだけで処罰しなくちゃならないんだ。


そんなことを認めるなんて…腐ってるよ、この国は。



いや違う。腐ってたのは…先代魔王か。



変えなくちゃならない、と強く思った。


人を恐れ、見下すも、蹂躙しようとする歴史も。この世界の未来も。



そして、この影夜国という国を、自分の手で護らなくては、と。