「ゲームだったら、凄まじいクソゲーだね」


「ある意味、魔王城よりも攻略に手こずるパターンのやつだな」


「……魔王不在の魔王城なんて、もう最終ダンジョンじゃないよね」



今の魔王城ならきっと、勇者じゃなくても落とせるぞ。


……多分。



「それじゃー、洞窟入りますか」



実に不本意だが、仕方がない。


人間(私は魔族かもしれないが)には、進まなくてはならない時があるのだ。



……洞窟の中に足を踏み入れると、一気に辺りが暗くなった気がした。


レンが聖力を使って、視界を少し明るく照らしてくれる。


私は彼の後についていくことにした。



ぴちょん、ぴちょんという水音がなんとなく不安を煽る。


心臓が早鐘を打ち始め、私は無意識にレンのフーデッドケープの裾を握りしめた。



「魔物の気配は、今のところなさそうだけどな。


気をつけなきゃならないのは、魔力の名残か」