焦げ茶色の髪の毛。色素は薄いが、黒い瞳。


黒いローブに、腰に差した剣。



…あれ?放火犯(仮)、結構イケメンじゃない?



どうしよう兵士さん、放火魔がイケメンだよと思いながら後ろを振り返ると。


なんと彼は顔を歪め、手を震えさせながら、起きあがろうとしていたのだ。



「…何故…何故ッ、休戦協定を破った、


“智の王”……いや、影夜国宰相…ランスロット!!」



は?智の王?宰相?しかも…“えいやこく”って、どこぞや。


というか本当にここ…もしかして、異世界…なの?


どうしよう。突きつけられた現実に、一気に冷汗が吹き出る。



「…休戦協定を、いつどこで破ろうなど…我らの勝手だ。


元より…人族と、魔族は相容れない種族なのだからな」


「なんだと…先代魔王に…唯一、人と魔族の休戦を意見したお前が…」



イケメン放火犯(呼び方格上げ)の眉が少し寄せられる。


そして深くため息をつくと、荒い息で、ボロボロになった男の人の額に手を掲げた。



「魔族の事情に、口を挟むな…人間」



そして刹那。


男の人…兵士さんは、その場から煙のように掻き消えていた。