神聖文字で書かれた例の石碑にも、同じような文があった。


『魔族の王へ捧げる』。


初代の人間王が、これを書いたということには、それだけでも大きな意味を持つと思う。


そして今度は、初代魔王陛下が文を勇者へ捧げている。


少なくとも始祖の時代は、今のように憎みあい、争い合うような状態ではなかったということだ。



そして、今度の石板ではわざわざ初代魔王陛下が、『この文字で』と記している。


これは、彼自身が、悪魔文字で聖剣のことを記す意味を分かっていたということだ。


それなら、わざわざ危険を冒して聖剣を見に行かずとも、戦争を止められる。


この石板とあの石碑には、それだけの価値がある。



しかしレンは首を縦に振らなかった。



「愛美の意見は正しいよ。でもそれじゃ頭の固い貴族の連中は納得しない。


教会ももちろん、面倒な形で絡んでくる。


あいつらは恐らく、歴史を秘匿し、戦争を長引かせることを目的にしてる」