「……いや。聖剣を見つけるまでは、王宮へ戻るつもりはない」


「え?」



しかし、帰ってきたのは予想外の答えだった。



「ど、どうして?スレイブヤードに捕まっていた勇者が返ってきたなんて、国民にとってはこれ以上ない朗報だと思うけど!」


「いや。和解交渉を失敗して、捕まった第一王子が脱獄して結果的に何もせずに王都に帰ってきたなんて、


戦争中でただでさえ不安定な国民の心に、不安要素を増やすだけだ」



何もできずに戻ってきたならば、それは、勇者の敗北と同義なのだと。


きっとほとんどの国民は、勇者は捕まってもすぐに脱走し、


あわよくば影夜国を倒してしまうことをすら期待しているのだ。



レンはそう言った。



「だから俺は、城には戻らない。


帰ってくるのは、最低でも聖剣の秘密を握った時だ」