「やばいな、そろそろ出航だ」



港の方で、蒸気を出している白い船を見ながら言った。


蒸気船なんだ、この世界の船。


てっきり帆船かと思ってた。



「走るぞ!」


「うんっ」



昨日はしっかり寝たし、ご飯も食べたし、お風呂にも入れたし、体力は万全だ。


全力疾走しても大丈夫。


だから2人で白い石畳の坂を駆ける。



港に走り着くと、まだ船と陸にかけられた橋のようなものが見えた。


どうやらギリギリだけど間に合ったらしい。


急いで船の目の前にいた船員らしき人からチケットを買い、あわてて船に乗り込んだ。



「あー、間に合ったー…」


「ギリギリセーフ…」



現に、私たちが乗り込んだあとすぐに、橋が船内に仕舞われた。


豪華客船というわけではないが、フェリーではない。


小さめだが、ちゃんと寝室がついている船だ。



ここで2日、王都に着くまで過ごすんだ。



「レン、フロントに鍵貰いにいこう」


「そうだな」



できるなら、今度こそシングルがいい。