「あ、あれ…レン」



沈む夕日を眺めていて、ふと視線を手元に落とすと、私はレンの左手首が少し赤く腫れていることに気がついた。


怪我してたの…? 今まで、全然気づかなかった。



「手、腫れてる。大丈夫?


もう、なんで言ってくれなかったの!?」


「あー。軽く捻っただけだし…それに、自分に治癒術をかけることはできないしな。


問題ないって」


「治せないから問題なんじゃない!放置して悪化したらどうするのー!」



ああ、こんな時、私が魔術を使えれば!


ランスさんみたいにレンの怪我を治せるのにー
……。



「そんなに気にするなって。受け身取り損ねた時に、ちょっとやっちゃっただけだから。


しかも、この体、勇者って言うだけあって、日本人だった時より数倍治りが早いんだ」


「でも……」


「それに、剣を持って何かと戦うのは多分、脱獄の時っきりだろ。


これから動かさずに安静にしてたら、数日で完治するよ」