赤い絵の具をこぼしたように、真っ赤に染まった空。


真っ赤とは言えど、オレンジや朱色、黄色などでグラデーションがかかった夕焼けには、禍々しさは微塵もない。



『夜までには、中立区域に着きます。


そこにはちゃんと宿のある街があったはずです。…そうですね、勇者?』


「多分。そこの街に港もあるから、王都へ行く船も出てると思う。


そこまで連れていってくれるってことか?」


『仕方がありませんね』



黄金色の瞳が、真っ直ぐにレンを見る。


その目は、何か暖かな色が孕んでいて。そう、まるで、慈しむような。



「……不死鳥。お前は古代の幻獣と言っても、魔物だよな。


それなのに、魔王と勇者が一緒にいることに反対しないのか?」


『誰が誰と仲良くしようと、当事者の自由でしょう。赤の他人があれこれ口を出す必要はない』


「…そうだけど」


『____それに、元より争いとは醜いものです』



不死鳥は、どこか遠くを見るように呟いた。


そう言えば、前もランスさんに対して、そんなことを言っていたような気がする。



長い時を生きている不死鳥は、始祖の時代を知っている。


だけど何故か、私は不死鳥に、始祖の時代のことを尋ねることは出来なかった。