「安全、か……」
「何だそれ」
「まあ、ちょっとな……」
「何だよー、そうやってすぐに隠そうとすんのお前の悪い癖だぞ。ほらほら、言ってみ」


 安が口元をニッと広げて笑う。悪戯っ子のようなその笑顔が俺は案外嫌いじゃない。だからこんなにタイプの違う安と友だちになれたのかもしれない。
 俺はふっと息を吐き出してから、自分の手元に視線を落としてポツリと言葉を零した。


「彼女にさ、フラれた」
「は!?いつ!?」
「三日くらい前」
「何だよ!三日も前にフラれたのに何で俺に教えないんだよバカ!」
「……ごめん、何か言いづらくて。それにいつものことだし」
「いつものことって……お前なあ」
「悪かったよ。でも今回のは何かさ、フラれた時の言葉が妙に引っ掛かってて」


 高校に入って同じクラスでそこそこ仲のいい女子達に何度か告白をされたことがある。もちろん、付き合っている相手がいる間は断ったりしていたけどフリーの時はほぼ二つ返事でOKしてきた。
 その彼女たちと付き合い始めると、なぜか毎回俺がフラれてその恋が終わる。しかも今まで長く続いた試しがない。
 今までで一番長くて2ヶ月。逆に一番短いのは数週間といった具合で、その理由がどれも『俺の気持ちが見えないから』というものだった。

 実際、そうなのだろう。俺自身も本当に彼女たちが好きだったかと聞かれると即答することができない。
 ただ、俺を好きだと言ってくれた気持ちは素直に嬉しかったし、気持ちを一生懸命に伝えてくれるというのにも好感が持てた。
 今はまだ不透明な気持ちであっても時間を共に過ごしていけば情も湧くんじゃないかと、そんな期待も含んでいたのかもしれない。

 けれどその期待はあっさりと裏切られ、既に7連敗だ。しかもその7連敗目が、俺の心に深い傷跡を残していった。