からっぽ。

《歩実》



こんな時なのに、私は呆然としたまま、動けなくなっていた。


「貸してっ」

坂下の言い方は、鋭かった。


「大丈夫だョ、汚い訳じゃないから」

そう言って、抱えて直そうとした時。


「俺の子供だから」


そう言って、奪う様に、私から彩葉ちゃんを引き離した。


時折感じて来た、疎外感。


坂下は、気付いていないだろうケド、それを裏付けるだけの、言葉と行動。


今は、そんな事を気にしている場合じゃない事は分かっている。


でも、私の頭の中に、しっかりと刻まれてしまった、出来事だった。