それから1ヶ月が経ち、みんなの中からも私の中からも教育実習期間のことが薄れていた頃、私はある大学のオープンキャンパスに訪れていた。

そこは、以前から志望している、湊真も通う柚ヶ崎大学。

奇跡なんて起こらないと思い込もうとする気持ちがありながらも、私はどこかで期待していたんだと思う。

オープンキャンパスが終わる時間になっても大学を出る時間になっても湊真に再会することはなく1日が終わろうとしていることに、落ち込む気持ちでいっぱいになってしまっていた。

やっぱりそんな奇跡は起こらないんだよと何とか自分に言い聞かせながら、バスを待っていた時。

……湊真がバス停に現れた。

会えた嬉しさのあまり、動くことも声を出すこともできずに呆然と湊真のことを見ていると、湊真が私の視線に気付き、驚いた表情を浮かべながら近付いてきてくれて。

再会の言葉と大学受験のことを少し話した後、想像すらしていなかった大きな奇跡が起こった。

「ずっと気になって忘れられなかった。もう俺教師じゃないから、告白してもいいよな?」

……そう、湊真に告白されたのだ。

その時の湊真の緊張を含ませた真剣な表情は、いつまで経っても忘れられない。


湊真と付き合うようになってからは幸せで仕方なくて。

湊真はいつも大人でやさしくて、受験生の私のことを気にかけてくれる。

表向きはしっかりものに見えるらしい私には、すぐに物を行方不明にさせてしまう特技があって、それに呆れることなくやさしく付き合ってくれる湊真のやさしさもすごく好きで。

他にも、一緒に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、好きなところがたくさん増えていった。

やさしくて、頼りがいがあって、おおらかで、カッコいい大人の男。

私にとっては、好きな人と手を繋ぐことも、名前を呼ぶことも、キスをすることも、体を重ねることも、全部、湊真がはじめての相手。

会うたびに、お互いの熱を感じ合うたびに、好きという気持ちは大きく膨らむ一方で、ずっとずっと、湊真と一緒に過ごしていきたいと思うようになっていた。