「それにしても、高宮さんってほんと楓花(ふうか)を信頼してるよねー」

「……は?」

「100%ってわけではないけどさ、楓花にサポートを任せること多いじゃない。それって信頼されてる証拠でしょ? 確かに楓花ってデキル子だし、高宮さんに限らず、他の人も同じだろうけど」

「……もしそうなら光栄だよね」

「絶対そうだって! あたしも信頼してもらえるようにもっと頑張らなきゃな~」


妙な気合いを入れる美紗子を横目に、心の中では「あの人が私を信頼なんて、ないないない」と私は全力で手を左右に振っていた。

あの人と私の間には、信頼なんてそんなものは一切ない。

あの人にとって私はただ頼みやすい存在というそれだけで、依頼されるのはいつも、誰もが嫌がるような面倒な仕事ばかり。

今私の手元に渡ってきたものだって、和訳して内容を理解した上、概要をまとめないといけないという厄介な仕事。

資料の概要を作成することは私たち営業サポート事務の仕事のひとつで、他の営業の人からも依頼されることだってあるけれど、それは私だけではなく他の営業サポート事務にも平等に行き渡るもののはず。

なのに、タイミングを見計らったように、頻繁に彼からこの面倒な仕事ばかりを依頼されるのだ。

……私以外の人にはやりやすい仕事しか依頼しないというのに。

それは、私に嫌がられようがどう思われてもいいという証拠だ。

あなたから頼まれれば、みんな嫌な顔をすることなく喜んで引き受けてくれると思うんですけど。と私は心の中で毒づき時計を見ると、ちょうど始業時間。

「今日も1日頑張ろう」と美紗子と言い合い、私は仕事に取り掛かった。


誰からの依頼であろうと、受け取った仕事は責任を持ってしっかりこなす。

それが私にできること。