顔を必死に背けて湊真から逃れ、私は拒否の言葉を訴える。


「やだってば! 結婚指輪が飾りもののわけないじゃない!」

「飾りものだって。信じろよ」

「やめっ、んんっ」


逃げる私の体を壁に押さえつけ、湊真は再び私の唇を塞いでくる。

どんなに湊真の手から逃れようとしても男の力に敵うはずもなく、どうにか離れて拒絶しても、すぐに湊真の唇が私に降り注ぐ。

どうして、こんなこと、するの……っ?

今の湊真が好きなのは私じゃないでしょ……っ?

私の心に入ってこないでよ……っ! 掻き乱さないで……!


「は……っ、そう、ま……っ」

「楓花が欲しい」

「やっ、湊真……っ、だめ……っ」


湊真の手が服の中に入り込んできて、その手から逃げようとするけどできない。


「楓花が好きだ」

「っ!」

「もう一度、俺のものになれよ。楓花」

「湊真……っ、あっ、やぁ……っ」


湊真の手が意地悪に私の体を這っていく。

こんなことダメなのに、私はもうどうすることもできなくて、私の体を知り尽くした湊真の動きに翻弄されるだけ。

……本当は、再会したあの日からずっと想ってた。

私たちは嫌いになって別れたわけじゃない。

気持ちが戻るのなんて、あっという間だった。

湊真に「好きだ」なんて言われてしまったら、気持ちを抑えることなんて無理に決まってる。

……私は、湊真が好き。

湊真の薬指に光る指輪が目に映る。

……そんなものをつけたまま、私を抱かないで。


「……お願い……っ。指輪、はずして……っ」

「……いいよ」


湊真のはずした指輪が金属音をたてて床を転がっていく音が、私と湊真が重なりあう音のすきまをかいくぐるようにして、微かに聞こえた。