翔君の過去を聞いた。
でも、私たちはまだ屋上にいる。

今行っても、先生に怒られるから。
「私、サボったの初めて…」
「え!マジか、なんかごめん…」
翔君は本当に申し訳なさそうにしている。
「謝らないで!翔君は私が気になってたからって、辛い過去を話してくれたでしょ?謝るのは私の方だよ!」
翔君が微笑む。
気持ちが楽になる。
私、翔君には幸せになってほしい。
もう、自分のこと…どうでもいい…。
「翔君… あのね?翔君、やっぱり…未桜ちゃんのこと…好きだと思うの…自分の気持ちに嘘ついてるでしょ?」
翔君の顔が暗くなる。
「そんなことない。俺はもう忘れたんだよ…」
「嘘だ!だって…、だって、入学式の日に、翔君、…”未桜”って寝言、言ってたんだよ?」
私は翔君に強く言う。
本当は隠しておくつもりだったこと、言わなきゃ…。
翔君に幸せになってもらうために!
「そんな事、言ったのかよ…俺…ダサっ…」
自分の気持ちに嘘つかないでよ。
「ダサくない!翔君、未桜ちゃんと、ちゃんと話さなきゃダメだよ…」
本当は話してほしくない…。
もし、二人が付き合っちゃったら、私…失恋しちゃうだよ。
でも、不幸続きの翔君には、幸せになってほしい。それだけなの。
だから、私は失恋するのでいいんだよ。
「俺は…俺のせいで、アイツの家族を壊したんだ…話すことなんて、何もないんだ…」
「それも嘘でしょ?壊したかった訳じゃないでしょ?真実を知ってほしかったんだよね?大好きな人に、お母さんと同じ目にあってほしくなかった。それだけでしょ?」
翔君が泣きそうになる。
「なんで…なんでだよ…なんで、俺の気持ちわかるわけ?俺、そんな分かりやすくないのに」
わかるんだよ。
大好きな人だから、わかっちゃうんだよ。
「分かりやすいよ。私なんかよりも、よっぽど分かりやすい!」
「やっぱり、俺、あいつのの事好きじゃないと、思う………俺が好きなのは………」
私は泣きそうになる。
もう泣きそう…。
「とにかく!翔君、未桜ちゃんのとこ、行ってきなよ…私、待ってるから!後でどんなこと話したか、聞かせて?」
私は笑って言う。
私が泣いたら、翔君が行けなくなる。
「ありがとう。…行ってくる。ちゃんと、話してくるよ…」
翔君も笑ってくれた。

翔君の携帯がなった。
「…誰だ?」
知らない番号だったのかな。
翔君は電話に出ると、みるみる顔色が悪くなっていった。
「翔君?どうしたの?」
翔君は、口を震わせて言う。
「ごめん…今日、未桜のとこ、行けそうにない…ごめん…ちょっと、行かなきゃいけないとこが…出来た…」
「え、ちょっと!翔君⁉」
翔君は走って屋上から出ていった。
大丈夫かな?
翔君、震えてた…。



次の日もその次の日も更にその次の日も、翔君は学校ね来なかった。