仁意那隊長は檻から抜け出る

次の日の朝、校舎は元通りになっていた。窓には黒い紙も貼られていない。校門に有刺鉄線も無い。誰かが校門を出たり入ったりしている。そんな風に自由に出入りできるなんて、あの頃は考えられなかった。帰ろうと思えば帰れる。暴力を恐れずに済む。

何もないと分かっているけど、教室に入るのに少し勇気がいる。ドアを開けると、懐かしい、みんなが自由に生きる朝があった。

「おはよう」

「おはよう仁意那!」

優ちゃんと沢野さんが挨拶をした。

「おっおはよう!」

椅子に座り、リュックサックを机に置く。そして、馬鹿にされないか心配で隠していたキーホルダーを付けなおす。顔をあげると、あの時眼鏡ケースを投げた窓が見えた。窓から差し込む朝日は暖かくて、ちょっと眠くなる。昨日寝れなかったし、今のうちに寝ようかな。

カバンをまくら代わりにうとうとしていると、先生が入ってくる。

「山ちゃん!」

「山梨先生!」

山梨先生は協力者のアパートに監禁されていた。その間、食事はあったけど外には一切出られなかった。錐山は山梨先生を行方不明にすることで、自分がこの学校に来れるようにしたらしい。
錐山の協力者は警察や教育委員会にもいた。その人たちは辞めさせられたりしたけど、まだまだいる可能性があるらしい。もしその人たちとまた何かしようとしていたら、みんなでまた阻止しようと話しあった。