眼鏡ケースを持ち、窓を開ける。

「隊長、何するつもりですか?」

干潟が聞く。その質問には後で答える。

勢いよく窓に乗り出し、大きく振りかぶって、眼鏡ケースを投げる。

「いっけえええぇ!」

私の声が響き、眼鏡ケースはそれに応えるかのように回転しながら屋上へ向かう。


そして、見事あいつの手首に当たった。
ナイフは下に落ち、あいつは痛そうにしている。もうあの様子じゃナイフは持てないだろう。
その後、高所恐怖症の私は下を見てしまい恐怖で動けなくなってしまう。近くにいた要と干潟に助けてもらい、窓から離れる。過呼吸っぽくなってしまったので、また二人に助けてもらった。

私が落ち着いてしばらく経った頃、周りが騒がしくなった。最初は何が何だか分からなかったが、どうやら警察が来たらしい。三人で窓を見ると、あいつが警察に捕まっていた。

「「「やったああ!」」」

三人同時に言って、ハイタッチした。私たちは、勝ったんだ。

「頑張ったかいがありました~!」

干潟が泣きながら言う。

「やりましたね!隊長!」

要がガッツポーズをする。

「今まで危険なことにも協力してくれてありがとう」

これは、他の皆にも言いたいことである。皆が協力してくれたから、今の解放がある。

「隊長……僕も、仲間に入れてくれたことに感謝しています!」

「私たちも……警備隊に囲まれた時、隊長が助けに来てくれなかったら……」

干潟たちが囲まれていた時は、月島先生たちが助けてくれたことで何とかなった。私だけの力ではない。

「そこの三人~!親が迎えに来たって~!」

これで、家に帰れるらしい。

「さようなら、隊長。今度は升山先輩ですね」

「隊長、副隊長、また学校でも普通に会いましょう」

「うん。またね。あと、升山先輩だとみっちーもいるから仁意那先輩で」

二人が歩き始めた時、私は自分の手首を見て思い出した。

「これはもう、私には必要ないな」

何故か廊下に置いてあったごみ箱に投げ捨てた。そういえば、ごみ箱は身を隠すため置いた物だった。でも、もう隠れる必要は無い。あいつを恨み続けた升山 仁意那も、生還を目指した仁意那隊長ももうじきいなくなる。
「仁意那先輩、何してるんですか?」

「あっごめん!ちょっと忘れ物」

階段にいる二人は私の事を待ってくれていた。階段まで一緒で、親を見つけたらさようなら。

私たちの解放作戦は、無事成功した。