全速力で四階の渡り廊下に行く。渡り廊下から屋上を見ると、あいつはまだ屋上にいた。あいつが逃げないように木下たちは頑張っているが、苦戦しているようだ。

「何でだろ……?木下たちの方が人数も多いのに……」

何だか、あいつに出来るだけ近づかないようにしているみたいな……
視力がいい干潟があっと言った。

「隊長!錐山先生がナイフ持ってます!」

「えっ!?」

干潟が指さす方を見たが、視力が悪い私には分からない。外していた眼鏡を掛けて見ると、確かに日光でキラリと光ったナイフが見えた。でも、本気で刺そうとしている風には見えない。おそらく、まだ脅しに使っているだけだろう。

あいつに近寄ろうとする人たちはいない。このままじゃ木下たちが……警備隊から武器を奪ったことは何回かあるが、あいつから奪うとなると近距離からは無理だろう。
考えているうちに、木下たちが疲れてきたらしい。それを見計らって、あいつは本格的にナイフで刺そうとしている。屋上に行っているうちに刺さったら……

こうなったら、あれしかない。