「そこの者、止まりなさい」

私の前に、唯貴さんが立ちはだかる。縄を持っていて、その縄にはカッターの刃の欠片が刺さっている。
唯貴さんは私と同じ部活だが、あまり話したことはない。いつもビクビクしていて、無口な子だった。

「警備隊も大分減っちゃったけど、それは防衛隊も一緒なのよ。何度も反抗したあなたは縄で縛って屋上で晒してあげる!」

唯貴さんは笑顔で縄を振り上げて、私を狙う。横に避けたが、すぐにまた振り上げる。このまま避け続けるのはきついな。昔よくある?あれみたいにされるのだろうか?高所恐怖症の私としては屋上はやめていただきたい。

「唯貴さん、やめなさい!」

箕輪先生は恐れず唯貴さんのところに行って、縄を取り上げた。

「道具をこんなことに使ってはいけません!」

珍しく武田先生が怒った。

「う……何か……思い出す……」

唯貴さんが何も言わず、座り込む。

「私……確か……視聴覚室に行って……ってあれ!?」

唯貴さんは周りをきょろきょろと見る。もしかして、さっきまでの事は覚えていない?

「これはしっかり話聞かなあかんな~」

月島先生はそう言って唯貴さんを見る。

「えっ何ですか?ヒエー!誰か教えて……」

いつもの唯貴さんに戻った。先生はどんどん警備隊の洗脳を解いていき、警備隊の中には私たちに協力してくる人もいた。