私は別に、自分の見た目とかどうでもよかった。何をしても気持ち悪いとか整形しろとか言われるから、もう諦めていた。
それでも、この真っ黒な髪だけは、友達も家族も、痩せ過ぎていて前歯も出ていると言った親戚も、邪魔者扱いした女子も褒めた。暇な時とかはいつも触っていたし、思い入れが無いわけではなかった。それなのに……
落ちた髪の束を握りしめた。そして、今私はどうなっているのかを見るため、水たまりに姿を映した。結べないくらいに短くて、ぼさぼさになっている。
水たまりに涙が落ちる。波紋が、見たくない自分の姿を消してくれる。

許さない。このことは絶対に忘れない。大人になっても、死んだ後も恨んでやる……

落ちた髪を集め、あいつの部屋の方を睨む。ただ脱出するだけじゃない。出来るだけあいつが嫌がる方法を選んでやる……

切られた髪で紐を編んで腕に結ぶ。これを見れば、反抗しようとする気持ちが強くなって、何を言われようともあいつに屈したりしない。