「ほら」
「え?」
透也は私の方に背を向けると静かにしゃがんだ。
「乗ってください」
この男は今なんて言った…?背中に乗れと??
「ほら、早く。そうしないとこのまま置いていきますよ?良いんですか」
それは困る。このままだとあと10分はまともに歩けそうにない。私は覚悟を決めた。
「し、失礼しまーす」
「失礼しますって…部屋じゃないんですから」
透也がまた笑った。
「…?」
鼓動が速くなったように感じた。
「先輩…?どうかしたんですか?」
「い、いや透也の背中広いなー…と思って。かっこいいな!」
ガンッ
思わず今思いついた事を言ってしまった。てか、何ださっきの音。何かにぶつけるような音だったが…
「おーい…大丈夫か?」
どうやら透也が壁に頭をぶつけたようだった。何かあったのか?
「だ、大丈夫です。気にしないでください。」
「お…そうか!じゃあ、とにかく行くぞ!!出発進行ー!!」
「…先輩落としますよ?」
「ごめんなさい…」
「まぁ、許します」
ただの先輩と後輩という関係だけだった私達にある名前がつくまで、後――。
『かっこいいな!!』
(…先輩それは反則だろ…!!!)

