『わり、時間見てなかったわ』

「私の方こそ、ごめんね宇佐見くん」

『それは俺のセリフだって。そんだけ添田と話すのが楽しかっって事だな』

「あっ……私も、楽しかった……」

『そ、そうかよ……』


私たちは、お互いに言葉を失う。

訪れた沈黙にドキドキと鳴る心臓の音が電話越しに聞こえてしまわないか、不安になった。


『あ〜……それじゃあ、長々悪かったな』

「こ、こっちこそ……じゃあ……」

まだ、切りたくないな……なんて。

どうしてそんな風に思うんだろう。

『おやすみ、添田。また明日な』

「あっ、う、うん……おやすみなさい、宇佐見くん」

そして、ブチッと切れる通話に、寂しくなる。

また明日、宇佐見くんに会えるんだもん……。

だから、この寂しさもすぐに消えるよね…。

「また明日……宇佐見くん」

さっきまで私と宇佐見くんを繋いでくれていたスマホを、そっと胸に抱きしめる。

少しでも、宇佐見くんのぬくもりが残っていますように、また……宇佐見くんの声が聞けますように、そう願って瞳を閉じた。