「添田さん、樹くんの事、私が連れてっても良いよね?」

「っ……うん」


三枝さんは、私に確認してくる。

もうやだ……。

今すぐにでも、泣いてしまいそう……。

眉間にシワを寄せて、泣かないようにと目に力を入れると……。


「七海先輩いますか?」

教室の入口から、聞き覚えのある声が聞こえた。

パッと顔を上げると、そこには舵くんくんがいる。

それにホッとして、駆け寄った。


「舵くん!」

「来るの遅いから、迎えにきた……って、なんかあった?」


私の顔を見た舵くんは、怪訝そうに眉をひそめる。

最近気づいたけど、舵くんって、よく人のことを見てるな。


「ちょっとだけ……」

「そう……」

そう言って、チラリと私の後ろを見る舵くん。

たぶん、樹くんと三枝さんを見てるんだろうなと思った。