「七海、俺の事、どうして避けてんだよ」

どうして……なんて、それを私に聞くの?

樹くんは、残酷だよ……。


「………」

無言で、掴まれた手をやんわりと振りほどく。

そして、そそくさと教室を出ようとした。


「七海、行くな……」

「えっ……」


後ろから腕を引かれ、樹くんを振り返る。

すると、驚くくらいに切なげな顔をしていた。


ーズキンッ

どうして、そんな顔をするの……?

私が離れることを寂しく思ってるんじゃないかって、期待しちゃうよ……。

そんなの、私の妄想でしかないけど……。


「樹く………」

「樹くん、添田さんの事なんて構わないで、私に構ってよ」


何か言わなきゃと口を開くと、三枝さんが、樹くんの手を無理やり私から引き剥がして、抱きついた。


ーズキンッ

やだ……。

こんなの、見たくない。

だから、樹くんから離れたのに……。