「樹くん……」
「樹がいなくて、不安?」
隣にいた亮くんが、そう言いながら、体育館の壁を背に腰掛ける。
それにならうように、私も腰を下ろした。
「不思議なんだけど……つい最近までは、樹くんに会うのが、すごく怖かったの…」
「怖い?」
「うん……。大切な人が出来るって、失った時の痛みを知っちゃうと、怖くなるものなんだと思う」
「じゃあ、樹は添田にとって、大切な人ってわけだ」
「あっ……」
ニコニコと笑いながら私を見る亮くんに、私はポッと顔を赤らめる。
「傷つくくらいなら、近づかないほうがいいって思うのに、樹くんといると、もっと一緒にいたいって思っちゃうんだ…」
恋は盲目とはよく言ったものだ。
今までの考え方、世間体も全て忘れて、その人の事だけを考えてしまうんだから…。
「なぁそれって……」
「「「キャァァッ」」」
何かを言いかけた亮くんの言葉を、悲鳴がかき消した。
何事かと顔を上げると、4番ゼッケンをつけた樹くんが、シュートを決めた所だった。


