「な、見せてくれよ」
ズリズリと私の返事を待つ事なく、隣にピッタリと席をつける宇佐見くん。
私はどっと疲れた。
もう……嫌だと思えば思うほど、宇佐見くんが近づいてくる気がする…。
抵抗するのも面倒になってきた。
「……………勝手に見て」
それだけ言って、机と机の間に、教科書を広げる。
「ありがとな」
「っ!!」
ありがとう……。
優しく、太陽の光が溢れるように笑う宇佐見くんの笑顔に目を奪われる。
ありがとうなんて、言われたの、いつぶりだろう。
『王子様はやめろよ……。でも、ありがとな!!』
不意に、幼い頃に、手作りのとんぼ玉をあげた王子様の笑顔と宇佐見くんの笑顔が重なって見えた。
そんなわけ……ないのに。
もう二度と、あの王子様には会えない。
だって、どこの誰かも分からないんだから……。
私は、制服の下、首にかけたとんぼ玉に、服の上から触れる。


