「お疲れ様です!」

「おつかれ~」

後輩に挨拶を返して部室を出る。

「ゆり、今日も望月と帰るの?」

職員室に鍵を返して昇降口に向かってる途中、一緒に歩いてた同じ部活の 佐藤里緒(さとう りお)にそう聞かれて私は「うん」と頷く。

里緒は「ラブラブでいいなぁ」って言って口を尖らせた。

「とか言って里緒もラブラブな彼氏いるじゃん」

私は満面の笑みで里緒を見る。
そして二人で顔を見合わせて笑いあった。

校門で里緒に「バイバイ」とお別れを告げて自転車置き場に向かうと 自転車の近くに座ってる私の大好きな人がいた。

「琉!お待たせ!」

私が彼の名前を呼ぶと 琉は振り向いて
「お疲れ様」
と笑顔で言った。

ー望月琉。
私の大好きな彼氏。
あと一ヶ月ちょっとで1年記念日だ。
出会いは中二で 同じクラスになって隣の席で仲良くなった。
家の近くの公園で告白されて私も好きだったから即OKした。
付き合いたてのとき、気まずくて学校ではなかなか話せなかったけどさすがに半年過ぎてくると学校でも話すし仲良くやってる。

琉が自転車を押して私がその隣を歩く。
さり気なく歩道側を歩いてる琉。
嬉しくて私は琉を見て微笑んだ。

私より20cm背が高い。
部活は野球部で坊主だけどそれがかっこよくて、素直で優しくて いつも中心にいるようなそんな人。
琉の事を好きだった人はたくさんいたし、モテモテだったから付き合った時は少し嫌がらせされた。
……昔のことを思い出したらいつの間に琉の事を見ていたみたいで 琉も私のことを見て首をかしげた。
私は慌てて「ごめんごめん」と笑って謝る。
楽しいな……
本当に、このままずっと琉といたいと思った。
毎日が幸せで楽しくて幸せすぎて怖いくらいだった。
友達がいて、大好きな人がいて。笑いが耐えなかった。
だからまさか"あんなこと"がおこるなんて 予想もしてなかった。