レジーナ フィオリトゥーラ

「え?」

何これ?

幽霊?

がたがた震えだした肩を抑えながら、私は、辺りを見回した。

うっそうと茂る森は、お化けなんかが出そうな雰囲気をかもち出している。

「どこ見てんだ。おい、こっちだ。」

下から、さっきの男の子の声がした。

良かった。幽霊じゃなかった。

ほっとした私が、声のする方を見ると、男の子の姿はなく、さっきのハリネズミが、鼻をヒクつかせながら、私を見ていた。

声は、明らかにハリネズミの口から発せられている。

「どうだ。これで分かったろ。まったく、折角元の姿に戻れたってのに。」

ハリネズミは、プンスカしながら、私を見上げた。

「涙なんて、そうそうって・・・お!」

ハリネズミは、うれしそうな声を上げると、私の膝の上に上がってきた。

一筋の涙が、私の頬を伝って落ちていき、ハリネズミの頭に落ちた。

「なんで、泣くんだ?」

質問と同時に男の子が、姿を現す。

「あ、安心して。」

しゃくり上げながら、なんとか答えると、男の子は、不思議そうな顔をした。

「なんで、安心するんだ?気味悪いだろう?」

「違うの。私、幽霊とか苦手だから。」

「変なやつだな。でも、泣き虫で助かったよ。おかげでこの通りだ。」

男の子は、うれしそうに言うと、立ち上がって、クルクルと回った。

おぼつかない足取りが、どうも不安を誘う。

「足で歩くのは、久しぶりだ。最近、塩が手に入らなかったからな。」

訳の分からないことを言う男の子を私は、涙目でぼんやり見つめた。

「お前、名前は?俺は、ルカ。」

「な、菜摘。」

「ナツでいいな。おい、ナツ。お前、異世界から来たって言っていたよな。」

そう言うと、ルカは、私の周りをグルグル回りながら、私を上から下まで観察した。