美人で頭の良い自慢のお姉ちゃんが、結婚すると言い出した時は、さほど驚かなかった。

もう知っていたから。

相手は、お姉ちゃんと私の幼馴染である柊君。

お姉ちゃんと柊君は、高校の時から付き合っていて、社会人になって二年目のクリスマス、意を決した柊君が、お姉ちゃんにプロポーズした。

ホワイトクリスマスになったあの日、柊君は、あろうことか、買ったばかりのエンゲージリングを溝に落としたのだ。

偶然、通りかかった私は、柊君と一緒に四時間かけて、溝の中を引っ掻き回した。

結局、なんとか見つかったリングを片手にお姉ちゃんとの待ち合わせ場所に走っていく柊君の後姿を見送りながら、私は、少しだけ泣いた。

偶然、通りかかったなんて、ウソ。

今日が、最後の告白するチャンスだったから、柊君が通る道で待ち伏せしていた。

手なんかコチコチだし、耳も鼻も真っ赤でひりひりした。

街のイルミネーションが、やけに輝いて見えて、今頃柊君は、お洒落したお姉ちゃんと一緒に素敵なレストランにいるんだろうと思うと、泥だらけの自分が、ひどく惨めに思えた。

ううん。

ずうっと、昔から惨めだった。

モデルみたいにきれいなお姉ちゃんと太っちょで可愛くない私は、いつも比べられてきた。

大好きなお姉ちゃん。

自慢のお姉ちゃん。

私の欲しくて欲しくてたまらなかったものをいとも容易く手に入れてしまう。

醜い心は、いつも私だけのもの。

嫉ましい。

あなたの全てが、嫉ましい。