絵画コンクールに出品する絵が完成した日、私は、家路を急いでいた。

柊君の家は、私の斜め向かいにあるから、家に帰ったらすぐ柊君に完成した絵を見てもらおうと思っていた。

瓢箪寺の前を通った時だった。

ふとお姉ちゃんの姿を見えた気がしたので、境内を覗き込んだ私の目に飛び込んできたのは、お姉ちゃんと柊君のキスシーンだった。

重なり合う二つの影を見たとき、全身から力が抜けていくのが分かった。

そして、同時に私が、柊君をとても好きだったということも。

「嘘つき。」

気が付くと、私は、泣いていた。

分かっていたことなのに。

分かっていることなのに。

「私のこと、好きだって言ってくれたのに。柊君の嘘つき。」

もう柊君は、私の所に来ないのに。

お姉ちゃんのことで泣いていると、いつも私を迎えに来てくれた柊君。

今度は、いくら柊君でも、きっと私を慰められない。

気が付いた瞬間に失恋なんて、あっけないものだ。

「嘘つき。嘘つき。嘘つき。」

結局、柊君だって、お姉ちゃんの方が、私より可愛いと思ったんじゃない。

もう他のどんな人に言われたって、気にしなくなっていたのに。