懐かしい夢を見た。

懐かしくて切ない夢。

「泣かないで、菜摘。見る目がない奴らの言う事なんか、気にするなよ。菜摘は、可愛いよ。自分じゃ気が付いていないかもしれないけれど、本当はすごく可愛いんだよ。その証拠におばさんもおじさんも果林も、菜摘のことが大好きじゃないか。」

ふてくされた私を迎えに来るのは、いつも決まって柊君の役目だった。

小さい頃、美人のお姉ちゃんと比べられるのが、悲しくて、よく家出をした。

その悲しみは、次第にあきらめに変わっていったけれど、幼い私は、友達の無邪気で心無い一言にひどく傷ついていた。

もちろん、家出といっても、近所の瓢箪寺に行って柿の木の下でしゃがみ、地面に絵を描いているだけだったけれど。

そこにいれば、柊君は必ず私を迎えに来てくれた。

「柊君も私が、好き?」

「もちろん。菜摘の描く絵も好きだよ。」

そう言って、柊君は、私の絵の横に花丸を加える。

「果林は、頭も運動神経もいいけれど、絵は、下手くそだからなあ。」

そう言って、私の頭を撫でてくれる柊君のことが好きだと気が付いた時には、もう全部遅かった。