「詳細は後日伝えるが、他社が担当していた仕事を営業の努力で受注できた仕事だ。開発チームに入ることになったら、力を尽くしてほしい」
 
神田課長は力強い声でそう言った。

「神田課長、やっぱり格好いい。なにを言っても自信に溢れてるし、手がけた仕事はすべて質が高いって評判だし」

「気難しい役員たちに意見を言える勇気もさすがだけど、彼の仕事ぶりを見れば当然だよね」
 
私から少し離れた席にいる女性たちの小さな声が耳に入り、ふと手を止めた。

議事録作成のため、会議が始まってからずっとパソコンに向かっていたせいか、不要な力が体に入っていたことに気づく。

小さく息を吐いて視線を上げれば、今話題にのぼっていた神田課長の姿が目に入った。

現在二十九歳の神田課長は、昨年、歴代最年少で課長に昇進し、若手たちの目標となっている。

今日の会議で話し合いが予定されている議題のうち、すでに終了したものを電子ボードから消し、残りの議題を見ながらなにかを考えている横顔に、胸の奥がとくんと鳴った。