本社の中枢である経営企画部が管轄している開発一課から三課のメンバーが一堂に会する月に一度の部内会議では、各課の進捗状況の報告や、今後の見通しについての意見交換、そしてトラブルが発生していれば、いち早い改善に向けた話し合いが行われる。
 
経営企画部は、社長直轄のプロジェクトを推進し、会社の今後を左右する重大な案件を取り仕切る重要な部署。

いつかはここで仕事をしたいと思っている社員は多く、また、優秀な人材が揃っている経営企画部の男性と結婚したいと願う女性も多い。
 
会議の調整役ともいうべき経営企画部の神田課長は、八十人以上が席を並べる会議室前方の電子ボードの前に立ち、今日の議題の中でも特に重要なテーマを話していた。

「『秋川総合病院』の新システム開発を開発三課が担当することになったと前回伝えたが、納期が当初の予定よりも前倒しされることになった。というわけで、一課と二課のメンバーの中からも何人か開発に参加してもらう」
 
神田課長の言葉に、ざわめきが広がった。
 
秋川総合病院といえば、診療科の数も多く、国内屈指の病床数を誇る大病院。

そんな病院のシステム開発に参加したい人は多いはずだ。

神田課長に集まる視線の温度が一気に上がったような気がした。