少年に別れを告げる日

巻いていたさらしをほどく。柔らかな膨らみがあらわになって、伊織はそこから目を逸らす。

最初は巻き方が難しくて時間がかかっていたが、もう慣れた。教えてくれたのは引っ越し前に一緒に暮らしていた母方の祖母だった。着物を着ることが多い祖母はさらしを巻くのに慣れていた。

伊織の決断に反対していた祖母は「教えるのはいいけれど……」と複雑な顔をしていた。

祖母にとっての可愛い孫は美織なのだと思う。女の子は女の子らしくという考え方の人だから、伊織にも美織のようにして欲しかったのだろう。

伊織が剣術を始めた頃から、女の子が刀を振り回すなんてと反対していたのだと聞いたこともあった。

「男とか女とか、関係ないじゃないか」

伊織と美織は一卵性の双子だ。けれど、性格や好みは違うことの方が多い。得意教科だってバラバラだ。

伊織は物心ついた頃には剣術に魅力を感じていた。剣術は男だけがするものだなんて思わなかった。

『女の子に優しくすんのは俺のポリシーだから』

湊の言葉を思い出すと、胸のあたりがもやもやする。女の子は守られる存在であるべきなんだろうか。

女だというだけで男から当たり前のように守ってもらえるんだろうか。

そういう考え方が伊織は嫌いだった。確かに一般的には男より女の方が力が弱くて、体力がないかもしれない。でも、やっぱり何かが違うような気がするのだ。

「じゃあ、僕はどうなんだよ……」

本当のことを知ったら、湊はどんな反応をするんだろうか。考えても仕方のないことを考えてしまう。

伊織は小さく震えた。いつの間にか身体が冷えてしまっていた。なにやってんだろうと呟いた伊織は浴室に入って熱いシャワーを浴び始めた。