入り口から音がして、伊織はそちらを見た。ゆっくりと入ってきた龍虎は道着を身に付けていた。
話をしたいとしか言っていなかったはずだが、龍虎はこうなることをわかっていたようだった。伊織もまた、龍虎にはわかるだろうと思っていた。
「龍虎様」
「話とはなんだ、伊織」
「……先日、鷹栖流から離れて、自由に暮らしなさいと言われたことについてです。僕に選択権があるのなら、剣術を続けたい。鷹栖流から離れることを、僕は望みません」
龍虎は頷いた。
「その様子だと、もうわかっているようだな」
「はい。僕の覚悟は剣で見せます」
「いいだろう」
木刀を取りに向かう伊織を、龍虎は待てと鋭く止めた。
「真剣だ」
美織がびくりと震えた。門下生達も息を呑む。真剣での打ち合いがどれだけ危険なことか……。一歩間違えば、命を落とすことだってある。長年続けている者であっても、真剣で行うのは型稽古までが普通だ。
「なっ!」
「健兄、僕は大丈夫だ」
たまらず声を上げようとした健一を、伊織は素早く制した。
「わかりました」
伊織は気持ちを落ち着かせ、愛刀を手に取った。一度は曲がってしまった日本刀だが、あの時とは違う。
「剣は心なり……心正しからざれば、剣また正しからず」
長年使ってきた愛刀は手に馴染んでいる。心が真っ直ぐでなければ、剣は曲がってしまう。心が弱ければ、剣も弱くなってしまう。しかし、真っ直ぐで強い心を持てば、剣もまた強くなる。
龍虎と向き合った伊織は大きく息を吸った。
「僕はもう、女であることを恥じることも、後悔することもしません」
ずっと女である自分を認められなかった。男だったら、当主として認めてもらえた。男だったら、もっと強くなれたかもしれない。なんで女に生まれてしまったんだろうと思っていた。
自分を認められない人間が、強くなれるはずがないのだ。女であることから目をそらしていてはだめなのだ。伊織は全部を受け入れようと思った。強さも弱さも全部。
話をしたいとしか言っていなかったはずだが、龍虎はこうなることをわかっていたようだった。伊織もまた、龍虎にはわかるだろうと思っていた。
「龍虎様」
「話とはなんだ、伊織」
「……先日、鷹栖流から離れて、自由に暮らしなさいと言われたことについてです。僕に選択権があるのなら、剣術を続けたい。鷹栖流から離れることを、僕は望みません」
龍虎は頷いた。
「その様子だと、もうわかっているようだな」
「はい。僕の覚悟は剣で見せます」
「いいだろう」
木刀を取りに向かう伊織を、龍虎は待てと鋭く止めた。
「真剣だ」
美織がびくりと震えた。門下生達も息を呑む。真剣での打ち合いがどれだけ危険なことか……。一歩間違えば、命を落とすことだってある。長年続けている者であっても、真剣で行うのは型稽古までが普通だ。
「なっ!」
「健兄、僕は大丈夫だ」
たまらず声を上げようとした健一を、伊織は素早く制した。
「わかりました」
伊織は気持ちを落ち着かせ、愛刀を手に取った。一度は曲がってしまった日本刀だが、あの時とは違う。
「剣は心なり……心正しからざれば、剣また正しからず」
長年使ってきた愛刀は手に馴染んでいる。心が真っ直ぐでなければ、剣は曲がってしまう。心が弱ければ、剣も弱くなってしまう。しかし、真っ直ぐで強い心を持てば、剣もまた強くなる。
龍虎と向き合った伊織は大きく息を吸った。
「僕はもう、女であることを恥じることも、後悔することもしません」
ずっと女である自分を認められなかった。男だったら、当主として認めてもらえた。男だったら、もっと強くなれたかもしれない。なんで女に生まれてしまったんだろうと思っていた。
自分を認められない人間が、強くなれるはずがないのだ。女であることから目をそらしていてはだめなのだ。伊織は全部を受け入れようと思った。強さも弱さも全部。

