「どうぞ」
美織が促すと、女性は慣れた様子で道場に入った。正しい入り方だったので、美織は少し驚いた。
「小学校から大学まで、剣道をやっていたんです」
「あ、そうだったんですか」
「和人が興味を持ってくれたのは嬉しいけど、剣道は気に入らなかったみたいで」
女性は和人に竹刀の持ち方を教えている伊織を見ながら、美織に訊いた。
「彼女が師範なんですか?」
「え……」
責任者も師範も今いないと言ったし、「若い男性」だと思っているはずなのに、そんなことを言い出すから、美織は首を傾げた。
「仕草や言葉でそう思って。若いのにすごいですね」
「少し前まではそうだったんですが、今は違うんです」
「そうなんですか?残念」
「驚かないんですか?中学生だし、女だし……」
女性は笑いながら首を振った。
「中学生だったの?中学生なのは驚いたけど、私は女性の師範に教わったから。師範が好きだったし、心から尊敬していました」
さっきは斬れないのかと不満そうだった和人が楽しそうにしている。美織は不意に幼い頃の伊織を思い出した。剣術を始めたばかりの伊織は本当に楽しそうだった。父に剣術を教わる伊織を、美織は母と並んで少し離れた所で見ていた。
「和人も楽しそうだし、教えてもらえるのなら、お願いしたい」
「そうできればいいんですが……」
「年齢も性別も関係なく、伊織さんは強いし、少し師範に似ています。不思議なもので、何年も剣道をやっていると、向き合っただけで強いかどうか、なんとなくわかるんです」
美織は嬉しかった。美織は伊織が強くて、当主にふさわしいと信じていたが、龍虎が伊織を認めなかったのだから不安もあった。外の人が伊織を強いと言ってくれたのが、本当に嬉しかった。
女性の言葉を全部伊織に聞かせたいと思った。聞かせて、剣術を続けてもいいんじゃないと言いたかった。あんなに大切にしていた剣術から離れることが、伊織にとっていいことだとは思えない。
美織が促すと、女性は慣れた様子で道場に入った。正しい入り方だったので、美織は少し驚いた。
「小学校から大学まで、剣道をやっていたんです」
「あ、そうだったんですか」
「和人が興味を持ってくれたのは嬉しいけど、剣道は気に入らなかったみたいで」
女性は和人に竹刀の持ち方を教えている伊織を見ながら、美織に訊いた。
「彼女が師範なんですか?」
「え……」
責任者も師範も今いないと言ったし、「若い男性」だと思っているはずなのに、そんなことを言い出すから、美織は首を傾げた。
「仕草や言葉でそう思って。若いのにすごいですね」
「少し前まではそうだったんですが、今は違うんです」
「そうなんですか?残念」
「驚かないんですか?中学生だし、女だし……」
女性は笑いながら首を振った。
「中学生だったの?中学生なのは驚いたけど、私は女性の師範に教わったから。師範が好きだったし、心から尊敬していました」
さっきは斬れないのかと不満そうだった和人が楽しそうにしている。美織は不意に幼い頃の伊織を思い出した。剣術を始めたばかりの伊織は本当に楽しそうだった。父に剣術を教わる伊織を、美織は母と並んで少し離れた所で見ていた。
「和人も楽しそうだし、教えてもらえるのなら、お願いしたい」
「そうできればいいんですが……」
「年齢も性別も関係なく、伊織さんは強いし、少し師範に似ています。不思議なもので、何年も剣道をやっていると、向き合っただけで強いかどうか、なんとなくわかるんです」
美織は嬉しかった。美織は伊織が強くて、当主にふさわしいと信じていたが、龍虎が伊織を認めなかったのだから不安もあった。外の人が伊織を強いと言ってくれたのが、本当に嬉しかった。
女性の言葉を全部伊織に聞かせたいと思った。聞かせて、剣術を続けてもいいんじゃないと言いたかった。あんなに大切にしていた剣術から離れることが、伊織にとっていいことだとは思えない。

