「伊織には言えなかったんだけど、事故の時に、お母さんのお腹には私達の弟がいたの。私1人が生き残って、3人が死んじゃったことが辛かった。
弟が生まれていれば、伊織は苦しまないで済んだ。男だったら跡を継げるのに残念だなんて言われることもなくなった」
「え……」
「知らなかったよね、ごめんね」
「いや、そうじゃなくて。なんで、美織が知ってるの?」
美織は首を傾げた。伊織は知らないはずだった。美織が入院中に病室でうとうとしていたら、両親が話していたのだ。
『美織の調子が落ち着いたら、弟ができることも話さないとね』
『そうだな。これで美織もお姉さんだ』
『退院して家に帰ったら、話そうと思ってるの』
家に帰る前に事故にあったのだから、まだ伊織は聞いていないのだと思っていた。
「僕に話してくれた時、お母さんは美織にはもうちょっと体調が良くなってから話すって言ってたから、美織は知らないものだとばかり……」
「嘘……」
「1人で抱え込んでたのか。辛かったな」
「辛かったのは伊織の方だよ。私よりずっと辛い状況だった」
いつの間にか伊織も泣いていた。自分も美織もばかみたいだと思った。双子で一番近い存在なのに、お互いに気を遣っていた。ちゃんと話していれば、色んなことをもっと上手くやれていたかもしれない。
「事故のこと、美織は悪くないよ。気にするなって言っても、無理かもしれないけど」
美織は小さく頷いてありがとうと言った。伊織からしてみると、少し意外だった。前までの美織は事故の原因を自分の中に探して、自分を責め続けていたから。
「自分が悪くなかったとは思えない。私がいなかったら起きてない事故だから。……でも、私のことを大切に思ってくれる人がいるなら、私は生きなきゃいけない。私がいなければよかったなんて、考えちゃいけない」
湊の言葉のおかげで、やっとそう思えるようになった。
「ああ、そうだな」
伊織は泣きながら美織を抱きしめる。失ったものは大きかったけど、また一から始めようと思えた。
剣術は伊織にとって何より大切なものだった。でも、考えてみれば、自分と同じ年代でそれほど大切なものを持っている人の方が少ないはずだ。
これから探していけばいいのだ。幸い、伊織にはまだ時間がたくさんある。2人で支えあって、他の人にも助けてもらいながら、進んでいけばいい。
ノックの音がして、顔をのぞかせた健一は驚いたように2人に駆け寄った。中をのぞいたら、伊織も美織も泣いているんだから、驚くのも無理はない。
「なんだ、どうした!?何かあったのか!?」
その慌てっぷりに伊織と美織は泣きながら笑った。
「何にもないよ、健ちゃん」
「いや、そんなに泣いて、何もないってことはないだろ」
「大丈夫だって、健兄」
「大丈夫って言われてもなぁ……」
心配そうな健一に大丈夫だと言いながら、今まで我慢していた分を取り返すように、2人は涙を流した。
弟が生まれていれば、伊織は苦しまないで済んだ。男だったら跡を継げるのに残念だなんて言われることもなくなった」
「え……」
「知らなかったよね、ごめんね」
「いや、そうじゃなくて。なんで、美織が知ってるの?」
美織は首を傾げた。伊織は知らないはずだった。美織が入院中に病室でうとうとしていたら、両親が話していたのだ。
『美織の調子が落ち着いたら、弟ができることも話さないとね』
『そうだな。これで美織もお姉さんだ』
『退院して家に帰ったら、話そうと思ってるの』
家に帰る前に事故にあったのだから、まだ伊織は聞いていないのだと思っていた。
「僕に話してくれた時、お母さんは美織にはもうちょっと体調が良くなってから話すって言ってたから、美織は知らないものだとばかり……」
「嘘……」
「1人で抱え込んでたのか。辛かったな」
「辛かったのは伊織の方だよ。私よりずっと辛い状況だった」
いつの間にか伊織も泣いていた。自分も美織もばかみたいだと思った。双子で一番近い存在なのに、お互いに気を遣っていた。ちゃんと話していれば、色んなことをもっと上手くやれていたかもしれない。
「事故のこと、美織は悪くないよ。気にするなって言っても、無理かもしれないけど」
美織は小さく頷いてありがとうと言った。伊織からしてみると、少し意外だった。前までの美織は事故の原因を自分の中に探して、自分を責め続けていたから。
「自分が悪くなかったとは思えない。私がいなかったら起きてない事故だから。……でも、私のことを大切に思ってくれる人がいるなら、私は生きなきゃいけない。私がいなければよかったなんて、考えちゃいけない」
湊の言葉のおかげで、やっとそう思えるようになった。
「ああ、そうだな」
伊織は泣きながら美織を抱きしめる。失ったものは大きかったけど、また一から始めようと思えた。
剣術は伊織にとって何より大切なものだった。でも、考えてみれば、自分と同じ年代でそれほど大切なものを持っている人の方が少ないはずだ。
これから探していけばいいのだ。幸い、伊織にはまだ時間がたくさんある。2人で支えあって、他の人にも助けてもらいながら、進んでいけばいい。
ノックの音がして、顔をのぞかせた健一は驚いたように2人に駆け寄った。中をのぞいたら、伊織も美織も泣いているんだから、驚くのも無理はない。
「なんだ、どうした!?何かあったのか!?」
その慌てっぷりに伊織と美織は泣きながら笑った。
「何にもないよ、健ちゃん」
「いや、そんなに泣いて、何もないってことはないだろ」
「大丈夫だって、健兄」
「大丈夫って言われてもなぁ……」
心配そうな健一に大丈夫だと言いながら、今まで我慢していた分を取り返すように、2人は涙を流した。

