「伊織、逃げてもいいんだよ」
「え?」
「辛いなら、転校しよう。最初から女の子として転校すれば、きっと辛くないよ」
「美織は転校したいの?」
伊織はきょとんと首を傾げる。美織を困らせようとしているわけではない。ただ、疑問に思った。美浜には紫乃も湊も昴もいる。
「もう、あのクラスには戻れない?」
「私じゃなくて、伊織が……女の子としてあそこに戻れるのかなって」
伊織は穏やかに笑った。ぽんぽんと美織の頭を叩く。
「戻れるさ」
「だって……」
「戻らなきゃいけない。嘘をついていたのは僕だから、責任は取らなきゃいけない」
こういうところが心配なのだ。伊織は真面目すぎる。逃げてもいいのにと思う。
「全部受け止めたら、ちゃんと歩き出せる気がするんだ」
「……伊織」
「ねえ、美織、僕は後悔してないんだよ。僕の選択は正解じゃなかったかもしれないけど、自分にやれることは精一杯やってきたつもりだ」
正解なんてないのかもしれないと伊織は思う。精一杯やったかやらなかったかの差なのかもしれない。伊織は精一杯やった。必死に駆け抜けた8年間だった。
「おじいさまが何と言おうと、伊織は強いよ。当主にふさわしいよ」
心からそう思う。伊織は剣術が好きで、鷹栖流を守りたかった。近くにいた美織はちゃんと感じていた。
伊織がぎょっとしたように美織の方に手を伸ばした。なんで泣くんだよと困ったように呟く。
「涙腺、おかしくなっちゃったのかな」
美織は笑みを浮かべながら涙をぬぐう。自分でも気付かないうちに涙が流れていた。昨日あれほど泣いたのに不思議なものだ。
「昨日、湊くんの前で泣いちゃったんだけど、それで緩んでるのかも」
「びっくりした。美織は小さい時から泣かない子だったから」
「うん、私もびっくりした。今までは我慢できてたから」
「太い注射打たれても泣かないから、美織は強いなーって思ってた。僕は美織も強いと思うよ」
美織はそうかなと呟く。伊織は気持ちを伝えてくれたのだから、自分も言わなくてはいけない。そう思った。
「え?」
「辛いなら、転校しよう。最初から女の子として転校すれば、きっと辛くないよ」
「美織は転校したいの?」
伊織はきょとんと首を傾げる。美織を困らせようとしているわけではない。ただ、疑問に思った。美浜には紫乃も湊も昴もいる。
「もう、あのクラスには戻れない?」
「私じゃなくて、伊織が……女の子としてあそこに戻れるのかなって」
伊織は穏やかに笑った。ぽんぽんと美織の頭を叩く。
「戻れるさ」
「だって……」
「戻らなきゃいけない。嘘をついていたのは僕だから、責任は取らなきゃいけない」
こういうところが心配なのだ。伊織は真面目すぎる。逃げてもいいのにと思う。
「全部受け止めたら、ちゃんと歩き出せる気がするんだ」
「……伊織」
「ねえ、美織、僕は後悔してないんだよ。僕の選択は正解じゃなかったかもしれないけど、自分にやれることは精一杯やってきたつもりだ」
正解なんてないのかもしれないと伊織は思う。精一杯やったかやらなかったかの差なのかもしれない。伊織は精一杯やった。必死に駆け抜けた8年間だった。
「おじいさまが何と言おうと、伊織は強いよ。当主にふさわしいよ」
心からそう思う。伊織は剣術が好きで、鷹栖流を守りたかった。近くにいた美織はちゃんと感じていた。
伊織がぎょっとしたように美織の方に手を伸ばした。なんで泣くんだよと困ったように呟く。
「涙腺、おかしくなっちゃったのかな」
美織は笑みを浮かべながら涙をぬぐう。自分でも気付かないうちに涙が流れていた。昨日あれほど泣いたのに不思議なものだ。
「昨日、湊くんの前で泣いちゃったんだけど、それで緩んでるのかも」
「びっくりした。美織は小さい時から泣かない子だったから」
「うん、私もびっくりした。今までは我慢できてたから」
「太い注射打たれても泣かないから、美織は強いなーって思ってた。僕は美織も強いと思うよ」
美織はそうかなと呟く。伊織は気持ちを伝えてくれたのだから、自分も言わなくてはいけない。そう思った。

