「こんにちはー」
湊は伊織達の家の前に来ていた。結局伊織達が学校に来ないまま夏休みが始まった。伊織が龍虎に負けたのを目の当たりにして数日。伊織と美織が心配で仕方なかった。
がらがらと戸が開いて、健一が顔を出す。湊と目が合うと、健一は笑顔を見せたが、疲れは隠しきれていなかった。
「来てくれたんだな。もう学校は夏休みか」
「はい。伊織達の様子は……」
「入るか?時間あるなら、少し話したい」
「あ、はい」
健一に言われるまま家の中に入る。居間まで来ると、ここで伊織から話を聞かされたことが思い出された。あの時の伊織と同じように、健一は少し緊張した面持ちだ。
「伊織は軽い怪我で済んだ。ただ、知り合いの病院で静養中なんだ。入院するほどひどいわけじゃないが、こっちにいるとどうしても余計なことが耳に入るし、ショックも大きかったみたいだからな」
伊織の悲鳴のような声を思い出す。あんな伊織は初めて見た。あまり動じず、いつも凛としていた伊織。
「美織は部屋にいる。こっちもかなりショックを受けてて、ほとんど食べないし、話しかけても反応が薄い。医者によれば精神的なものだろうって」
美織を部屋まで連れて行った湊だが、あの時の美織は魂が抜けてしまったようだった。どこか遠くを見ていて、湊と目を合わせようとしなかった。
「伊織達の事情、どこまで聞いた?」
「6歳の時に両親を亡くして、長男がいなかったから、伊織が男として跡を継いだということと、女だとバレたら当主の座を追われるかもしれないってことくらいです。
でも、伊織が半端な覚悟でやってたんじゃないっていうのは、わかってます」
健一は頷いた。湊が聞いた話は間違っていない。ただ、全てを話したというわけではないのだ。
「それ、伊織が言ったんだよな?美織は何も言ってなかったか?」
湊は思い返してみたが、美織は不安そうに伊織を見守っていただけで、何も言わなかった。話が終わってからありがとうと口にしただけだった。
「多分、何も……」
「美織は自分から話せるタイプじゃないからな。少しだけ話そうか」
健一は美織を救えるのは自分ではないと思っている。多分、伊織にも無理だ。美織を救えるのは外側の人間だ。
「両親が交通事故で亡くなった時、美織は同じ車に乗っていた。伊織は違う場所にいたが、美織は事故を経験してる」
「でも、事故は美織ちゃんのせいじゃないですよね」
「ああ。ただ、退院した美織を家に連れて帰る途中のことだったから、責任を感じてるんだろうな。元々、自分が伊織から母親を奪ってるんじゃないかって気にしてるようなとこあったんだ」
美織は悪くないと、伊織に言われようが、健一に言われようが、誰に言われようが、美織は結局それを受け入れられていない。自分を責め続けている。
湊は伊織達の家の前に来ていた。結局伊織達が学校に来ないまま夏休みが始まった。伊織が龍虎に負けたのを目の当たりにして数日。伊織と美織が心配で仕方なかった。
がらがらと戸が開いて、健一が顔を出す。湊と目が合うと、健一は笑顔を見せたが、疲れは隠しきれていなかった。
「来てくれたんだな。もう学校は夏休みか」
「はい。伊織達の様子は……」
「入るか?時間あるなら、少し話したい」
「あ、はい」
健一に言われるまま家の中に入る。居間まで来ると、ここで伊織から話を聞かされたことが思い出された。あの時の伊織と同じように、健一は少し緊張した面持ちだ。
「伊織は軽い怪我で済んだ。ただ、知り合いの病院で静養中なんだ。入院するほどひどいわけじゃないが、こっちにいるとどうしても余計なことが耳に入るし、ショックも大きかったみたいだからな」
伊織の悲鳴のような声を思い出す。あんな伊織は初めて見た。あまり動じず、いつも凛としていた伊織。
「美織は部屋にいる。こっちもかなりショックを受けてて、ほとんど食べないし、話しかけても反応が薄い。医者によれば精神的なものだろうって」
美織を部屋まで連れて行った湊だが、あの時の美織は魂が抜けてしまったようだった。どこか遠くを見ていて、湊と目を合わせようとしなかった。
「伊織達の事情、どこまで聞いた?」
「6歳の時に両親を亡くして、長男がいなかったから、伊織が男として跡を継いだということと、女だとバレたら当主の座を追われるかもしれないってことくらいです。
でも、伊織が半端な覚悟でやってたんじゃないっていうのは、わかってます」
健一は頷いた。湊が聞いた話は間違っていない。ただ、全てを話したというわけではないのだ。
「それ、伊織が言ったんだよな?美織は何も言ってなかったか?」
湊は思い返してみたが、美織は不安そうに伊織を見守っていただけで、何も言わなかった。話が終わってからありがとうと口にしただけだった。
「多分、何も……」
「美織は自分から話せるタイプじゃないからな。少しだけ話そうか」
健一は美織を救えるのは自分ではないと思っている。多分、伊織にも無理だ。美織を救えるのは外側の人間だ。
「両親が交通事故で亡くなった時、美織は同じ車に乗っていた。伊織は違う場所にいたが、美織は事故を経験してる」
「でも、事故は美織ちゃんのせいじゃないですよね」
「ああ。ただ、退院した美織を家に連れて帰る途中のことだったから、責任を感じてるんだろうな。元々、自分が伊織から母親を奪ってるんじゃないかって気にしてるようなとこあったんだ」
美織は悪くないと、伊織に言われようが、健一に言われようが、誰に言われようが、美織は結局それを受け入れられていない。自分を責め続けている。

